2017年09月12日
に行っ練習中も
少しは覚えていることもある。
何度も独りでホテルまで歩いて行ってみたが、会いたい友達に二度と会えることはなかった切ない記憶だ。
夕暮れの帰り道、幼稚園の禎克は涙を拭きながら歩き、いつしか世の中にはどうにもならないことが有るのだと知り、初めて何かを諦めた。
すごく悲しかった別れは時間が癒し、日々の生活の中では新しい友懷孕前準備達ができ、夢中になれるものが見つかって、幼稚園の頃の出会いは、全て遠い過去のものになってゆく。
ただ心の深いところで、紅いお振袖の子が今も自分の名を呼び涙ぐんでいるのを、禎克は知っていた。
「さあちゃ~ん……」
その子は、禎克のことをそう呼んでいた。
*****
禎克の通う高校には、運動部専用の宿泊施設がある。間もなくインターハイ予選が始まるため、バスケ部は毎年、事前に一週間の戦略合宿を組む。禎克には、高校生になって初めて経験する合宿だった。
「金剛!早いな。」
「あ、上谷先輩。おはようございます!」
「よく眠れてるか?」
「大丈夫っす。先輩は膝の調子はどうですか?」
「なんとかな。インターハイまで持ってくれればいいんだけどな。」
「行きましょうね、全国。先輩と行きたいっす。」
「おうっ!お前のキラーパス、頼りにしてるからな。」
明るい顔を向けるのは一つ上の、上谷彩(かみやひかる)。精度の良い3P(ポイント)シューターだ。
中学の頃からバスケ雑誌に写真が載ったりして、ちょっと愛樂維香港した有名人だった禎克には、入学時分、上級生もどこか距離を置いてよそよそしかったが上谷だけは違っていた。
初対面の時から禎克の入部をすごく喜んでくれた。むしろ余りに親しげなので面喰い、何か意図があるのかと腹を探ったくらいだ。
上谷に声を掛けられたのは、三月前の、入学式後のことだった。
「よお、来たな。金剛は、てっきり城聖高校に行くんだとばかり思ってたよ。この辺だと、あそことうちがいい勝負だからな。」
「あの……?」
「あ。ごめん、バスケット部二年の上谷彩(かみやひかる)だ。監督に金剛が入るって聞いて、すっげぇ楽しみで、待ってたんだ。」
「ありがとうございます。見学したとき、ここがチームワーク良いと思ったんで……。」
「まあ、部員が少ないからな。だが、監督が頑張ったんで、今年の一年には結構いい人材が揃ってると思うぞ。ほら、初瀬中の明神とかさ。」
「そうですね。」
「……おい。それだけかよ。噂通りの無愛想だなぁ。だがな、全中選抜(全国中学生選抜)のポイントガードの金剛が入ってくれれば、うちもインターハイ出場も夢じゃな懷孕前準備くなると思って楽しみにしてたんだ。行こうな、インターハイ。(全国大会)」
「はい。よろしくお願いします。」
思わず頭を下げた。
「丁寧だなぁ……。もう少し、くだけてもいいぞ。人見知りか?」
「……普通だと思いますけど。」
「いや、固いって。」
くしゃと笑ったら、上谷の片頬にくっきりと印象的なえくぼができる。
同じ中学からの連れはいなかったが、この先輩となら、たぶんやっていけると思った。
*****
「一年の部屋は、二階なんだ。判るか、金剛?」
「はい。部屋割り表貰いましたから。あ……っと。」
階段で落とした荷物の横ポケットから、かさと乾いた音を立てて、何かが滑り落ちた。
「なんだ?……写真?」
「あ、それ、ぼくのお守りなんです。」
「へぇ……。ずいぶん古いものだな。写ってるの金剛……と?」
「昔、仲の良かった友達です。」
上谷が拾って見つめる古い写真は、いつか舞台を見たときに、二人を並べて劇団員が撮ってくれたポラロイド写真だった。色も変わってしまったが、捨てられなくてパウチしていつも持っている。
「実は……これを持って臨んだ試合は、これまで負け知らずなんです。だから持ってれば怪我とかしないかなって思って、いつも持ってます。気休めだと思いますけど。」
何度も独りでホテルまで歩いて行ってみたが、会いたい友達に二度と会えることはなかった切ない記憶だ。
夕暮れの帰り道、幼稚園の禎克は涙を拭きながら歩き、いつしか世の中にはどうにもならないことが有るのだと知り、初めて何かを諦めた。
すごく悲しかった別れは時間が癒し、日々の生活の中では新しい友懷孕前準備達ができ、夢中になれるものが見つかって、幼稚園の頃の出会いは、全て遠い過去のものになってゆく。
ただ心の深いところで、紅いお振袖の子が今も自分の名を呼び涙ぐんでいるのを、禎克は知っていた。
「さあちゃ~ん……」
その子は、禎克のことをそう呼んでいた。
*****
禎克の通う高校には、運動部専用の宿泊施設がある。間もなくインターハイ予選が始まるため、バスケ部は毎年、事前に一週間の戦略合宿を組む。禎克には、高校生になって初めて経験する合宿だった。
「金剛!早いな。」
「あ、上谷先輩。おはようございます!」
「よく眠れてるか?」
「大丈夫っす。先輩は膝の調子はどうですか?」
「なんとかな。インターハイまで持ってくれればいいんだけどな。」
「行きましょうね、全国。先輩と行きたいっす。」
「おうっ!お前のキラーパス、頼りにしてるからな。」
明るい顔を向けるのは一つ上の、上谷彩(かみやひかる)。精度の良い3P(ポイント)シューターだ。
中学の頃からバスケ雑誌に写真が載ったりして、ちょっと愛樂維香港した有名人だった禎克には、入学時分、上級生もどこか距離を置いてよそよそしかったが上谷だけは違っていた。
初対面の時から禎克の入部をすごく喜んでくれた。むしろ余りに親しげなので面喰い、何か意図があるのかと腹を探ったくらいだ。
上谷に声を掛けられたのは、三月前の、入学式後のことだった。
「よお、来たな。金剛は、てっきり城聖高校に行くんだとばかり思ってたよ。この辺だと、あそことうちがいい勝負だからな。」
「あの……?」
「あ。ごめん、バスケット部二年の上谷彩(かみやひかる)だ。監督に金剛が入るって聞いて、すっげぇ楽しみで、待ってたんだ。」
「ありがとうございます。見学したとき、ここがチームワーク良いと思ったんで……。」
「まあ、部員が少ないからな。だが、監督が頑張ったんで、今年の一年には結構いい人材が揃ってると思うぞ。ほら、初瀬中の明神とかさ。」
「そうですね。」
「……おい。それだけかよ。噂通りの無愛想だなぁ。だがな、全中選抜(全国中学生選抜)のポイントガードの金剛が入ってくれれば、うちもインターハイ出場も夢じゃな懷孕前準備くなると思って楽しみにしてたんだ。行こうな、インターハイ。(全国大会)」
「はい。よろしくお願いします。」
思わず頭を下げた。
「丁寧だなぁ……。もう少し、くだけてもいいぞ。人見知りか?」
「……普通だと思いますけど。」
「いや、固いって。」
くしゃと笑ったら、上谷の片頬にくっきりと印象的なえくぼができる。
同じ中学からの連れはいなかったが、この先輩となら、たぶんやっていけると思った。
*****
「一年の部屋は、二階なんだ。判るか、金剛?」
「はい。部屋割り表貰いましたから。あ……っと。」
階段で落とした荷物の横ポケットから、かさと乾いた音を立てて、何かが滑り落ちた。
「なんだ?……写真?」
「あ、それ、ぼくのお守りなんです。」
「へぇ……。ずいぶん古いものだな。写ってるの金剛……と?」
「昔、仲の良かった友達です。」
上谷が拾って見つめる古い写真は、いつか舞台を見たときに、二人を並べて劇団員が撮ってくれたポラロイド写真だった。色も変わってしまったが、捨てられなくてパウチしていつも持っている。
「実は……これを持って臨んだ試合は、これまで負け知らずなんです。だから持ってれば怪我とかしないかなって思って、いつも持ってます。気休めだと思いますけど。」
Posted by 吉は笑顔を引っ at 13:46│Comments(0)