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2016年01月12日

無事発見する


  

 何やら、自信がありそうに答えた。ここで奉行所のお調べに任せて、証拠なしで無罪を言い渡されては、必ずどこかの大店が犠牲になってしまうからである。
   「必ずお役に立てると思いますが、それには一つ条件がおます」
   「どんなことだ」
   「われわれ師弟の内、一人で宜しいので、盗賊が繋がれたお牢の前に四半刻ばかり居させて貰いたいのです」
   「それは叶わぬ、お牢の前に一般の者を入れることは罷り通らぬことである」
   「そうですか、では仕方が有りません、我々はここで引き揚げさせて頂きます」
 後のことは、奉行に任せて、亥之吉、三太、辰吉は戻っていった。

 それから三日後のことである。目明しが亥之吉を訪ねて福島屋へやって来た。捕らえた盗賊を拷問にかけたか、誰一人吐かなかったようだ。
   「亥之吉さん、お奉行がお牢の前に一人入れても良いと言っておられる、来てくださるか」
   「分かりました、では一番若い辰吉という、わいの倅を入れて貰いましょう」
 亥之吉は辰吉を呼び、何やら囁くと、辰吉は「うん、うん」と頷いて、目明しに付いて奉行所へ行った。

   「いえ、それはその…わいではなくて…」
   「あれだけの手柄を立てておいて、何と奥ゆかしい」
 麻で編んだ銭袋に入った銀百両を手渡された。上方で流通しているのは、金の小判ではなくて、丁銀と呼ばれる銀貨で、一両は六十匁(225g)であるとして、百両ともなれば、二十二キログラム以上の重さである。
   「うわぁ、こんなに頂戴してええのだすか?」
   「へえ、店の者、みんな亥之吉さんに感謝しとります」
   「ほんなら、遠慮のう頂戴しまして、有意義に使わして貰います」
 
 亥之吉は、受け取った銀六貫匁を三吉の鷹塾を建てるのに役立てようと言った。同じことなら、新築の建物にしてやりたいのだ。三太も辰吉も異論はなかった。

 それから更に十日後、江戸からお使者が十数人の護衛と共にやって来た。亥之吉、三太、辰吉の三人は、東町奉行所に呼び出された。
   「其方たちの働きで、盗賊が一網打尽に出来た、盗賊達が奪い盗って集めた八千両もことが出来て、幕閣のお歴々も、誰一人腹を切らずに済んだことを慶んでいると言うことだった。
   「そこで、江戸からお使者が報告に訪れて、其方たちに礼を言いたいそうである」
   「幕閣のお使者をご案内致しました」
 奉行が控える部屋の襖が静々と開かれて、二人の若いお使者が導かれて入って来た。三太がその使者を見上げて、「あっ」と、声を漏らした。
   「長坂清心さまと、清之助さまではありませんか」
 奉行が三太を咎めた。
   「今日のお二人は、お上のお使者ですぞ、三太、慎みなさい」
 だが、清心と清之助が三太の元へ走り寄った。
   「三太さん、お久しぶりです」
   「お父さまは、おかわりありませんか?」  


Posted by 吉は笑顔を引っ at 16:28Comments(0)
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