2015年08月28日
絡まれたりします
昏い目をして窓の外を見やった。しとしとと降り続く雨は、部屋の中にまで湿気を運んでくる。
「あの日もこんな雨でさぁ・・・・・・どんなに剣術邊間做熱石好の稽古をしても、大砲の一発にゃ敵わなったんだよね。元々剣術なんて嫌いだったし、俺には今の生活が性に合ってるんだ」
「・・・・・・だったらいいけどさ」
やはり仙吉は心に大きな傷を負っているのだ――――――ならばそれが癒えるまでそっとしておいてやろうと、味噌汁を飲み終えたお鉄はふらりと立ち上がる。
「でもね・・・・・・そんな呑気な事を言ってたら、ややも押し付けるよ」
「え?もしかして出来たの?産み月は?」
満面の笑みをこぼす仙吉に、お鉄は苦笑いを浮かべる。どうやらこの様子では襁褓変えどころか乳までやりかねない。
「・・・・・・まだできちゃいないよ。ただ、子供がいた邊間做熱石好ほうが娼妓の姐さん達からの評判は良いんだよね。お春も子供を産んでから仕事が増えたっていうし」
客を寝取りかねない独身の芸妓より、良人のいる身持ちの固い芸妓のほうが横夏の日差しが眩しい品川での事だった。旧知の友である宇部賢太郎と共に汽車に乗り込んだ中越剛一郎は、その光景を目の当たりにして驚愕する。
「おいおい、ここは汽車の中だ・・・・・よな、賢さん」
そこにいたのは娘義太夫らしい袴をつけた若い娘と、その取り巻き連中だった。金に物を言わせ一等車に乗り込んだのだろう。だが、その態度は一等車の客として相応しいものではなかった。
娘義太夫は既に酒を煽って微酔い加減だ。脚を向かい側の席に座っている男の膝に投げ出し、白い脛が丸見えだ。胸許もだらしなく寛げ、乳房の膨らみが中越にさえ見えてしまっている。そしてそんな艶かしい、というよりだらしなさ極まりない娘義太夫を、取り巻き達はうっとりと見つめていた。年齢からすると大学生くらいだろうか。書生風のその姿に中越は怒りを通り越して呆れ果てた。
「おや、あれは昇菊じゃありませんか。今一番の売れっ子らしいですよ」
中越の言葉に娘義太夫の顔をちらりとmiris spa好唔好見た宇部は、物珍しそうに声を上げる。
「・・・・・・そんな売れっ子義太夫が何故汽車の中に?」
「きっと横浜で寄席があるんでしょう。さすがに一人で行動するとんで、取り巻きの書生達が姫君の護衛よろしく傅いているんですよ」
別に珍しいことではないと、しょっちゅう汽車で東京都の間を往来している宇部は笑った。しかし中越としては腑に落ちないものがある。
(親が汗水たらして稼いだ金を娘義太夫につぎ込ん
Posted by 吉は笑顔を引っ at
13:00
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